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◎ 北京と「おでん」



  北京市・王府井に在るコンビニ「セブンイレブン」で、食文化の研修をさせていただいた。ファーストフードはコンビニエンスストアの主力商品。売上構成比は、日本が29.9%、ハワイが29.7%と高く、ハワイを除く米国は15.5%。北京は27.7%で日本並みの比率だという。

  進出するにあたって、日本の仕組みをそのまま採用実践するのではなく、中国の消費者ニーズを研究し、売り上げを伸ばす努力をしている。日本人はおまかせ定食を好むが、中国は一品一品選ぶのが好き。ここにポイントを置いたファーストフード作戦となった。

  北京の食文化の現状。ビールは常温で飲むのが当たり前。冷えたビールは、冷やした料金を割り増しさせる「一物二価」方式。生野菜は家畜が食べるもの、という考え方が主流で食べない。日本の弁当は電子レンジで温めて販売するが、こういう発想は通用しない。食べ物は、注文すればその場で作ってくれるもの、という考え方だという。食文化の違いは、味も考え方も日本とは差が大きいようです。

  ビールは、冷やしたほうが絶対うまいという自信を持ち、開店から冷蔵ビールにこだわった。開店2年での答えは、8割が冷えたものの売り上げとなっているという。

  生野菜のサラダは、中国女性のヘルシー食品として人気を得ている。1店当たりの販売量は、日本を上回っている。

  弁当は、日本ではパック詰めが主流ですが、北京の店では、店内で加工加熱し、出来立てで温かいおかずを組み合わせて自由に選べる中華料理にしている。

  北京には、「おでん」という食べ物はなかった。しかし、北京の女性は細身な体なのにダイエットには気を使うそう。油っぽくない「おでん」は絶対売れるという自信があったという。

  北京では、コメは匂いのするほうを好み、おにぎりにノリもダメ、香りを嫌うそう。おでんのスープに鰹節の隠し味もだめ、なじみがなく嫌っているという。そこでスープの味は、鰹節を落とし、逆に日本人の嫌う香料を加えたりして北京の人になじむものを作ったという。
 
  「おでん」という食べ物が古来から無かったということが幸いした。日本だったら「おでん」は寒い時に売れる、そう決め付けている。昔から、厳冬期の体が温まる食べ物のイメージが頭の中に焼きついている。中国はそういう観念がないから、夏・冬関係なく平均して売れるという。また、日本だったら夜のおかずのイメージがあるが、北京は違う結果となっている。朝からまんべんなく売れ、午前10時までに約22%という数値を示しているという。

  「おでん」売り上げを見てみると、一番売れるのは「タマゴ」。1店当たり、日本の店の20個に対し、北京の店は120個。2番手は「しらたき」。北京の人にとっては、これも初めての食べ物だったらしい。ヘルシーで食感がグーということで、女性に人気。3番手は「コンブ」。日本とは違い、茎の硬い所を細く切って結んだもの。続いて「だいこん」。そして、これも北京初登場の「揚げだし豆腐」、「つくね」と続く。

  現在、店に1000人の客が入れば、1000個の「おでん」が売れるという。ファーストフードが店の主役に踊り出ている一因は、「おでん」ということでしょう。この店の販売、コンビニのファーストフード販売平均3割を越え、5割を占めている。

  北京市民は、「何を求めているのか」「何を提供すればよいのか」、これを過去の食文化にとらわれず、お客様の立場になって実践したことが、北京進出の成功を得たと感じさせられた。

  たかが「おでん」、されど「おでん」、スタッフの新しい挑戦が大きな成果を得た。しかし、同業者が類似した進出を始めたというから、小売業は常に改革・改善との闘いが続く世界なのですね。


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