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◎ 「がんばらない介護のすすめ」その2 野原すみれ・さん



 がんばらない介護のすすめ   野原すみれ さん 雑誌 Pumpkin 3月号から抜粋
   「夫を味方につけて、賢い介護ライフを送る」




  さて、ではだれがどうやってがんばるのか。ホームヘルパーや訪問介護、ショートスティなど、公的介護サービスをめいっぱい使います。サービスの提供者はプロ。高齢者の心理を熟知しているはずです。年中無休で疲れ切って自宅でする介護とレベルが違います。

健康状態もよくなるケースはざらにあります。それからお友だちの手も借ります。家族の協力も絶対必要です。男の人の中には、子どもの躾と親の世話は、男のかかわるものではないと思っている方がまだまだいます。自分が呆けたり、寝たきりになっても、妻の手厚い看護を受けてあの世にいけると、高を括っているんですよ。

  ご主人が介護に何ひとつ協力してくれないなら、諦めるのでも待つのでもなく、望むことを伝えて話し合うことです。「忙しいのはわかるけれど、私の苦労話くらい聞いて」と精神的なフォローを求めるのでもいいでしょう。

話し合っても進展がなければ実力行使をお勧めします。たとえば仮病を使って「あなたにいくら介護の大変さを言っても、理解していただけません。私は大変で大変で死にそうです」とポロリと涙を流すんです。ご主人はびっくり仰天。初めて反省して家事を手伝ってくれるはず。

そのとき、ゴミ捨てでも、お茶碗をひとつ洗ってくれただけでも「まあ、ありがとう助かったわ」と大げさに感謝してどんどんやってもらうのがコツです。

  それでもご主人は三日坊主で終わるかもしれません。そんな場合には実力行使の第二弾、プチ家出という手もあります。深刻な家族会議が行われているときに帰ってきて「ご心配をおかけしました。ひと晩寝ずに考えましたけれど、やはりここが終の棲処(ついのすみか)です。あなたと一緒におばあちゃんのお世話もして生きていきたいと思います」と言ってください。ご主人は女房のけなげな態度に感動して妻の味方になってくれます。

「夫は自分の味方だ」と思えるかどうかで介護のつらさは何百倍にも変わります。夫を味方につけて、「介護を当番制でやろう」「公的介護サービスを使おう」と提案してもらいましょう。これで文句ばかり言う小姑の口封じができますね。

  特別養護老人ホームなどの長期の施設はもちろん、ショートステイでも最初から喜んで利用するお年寄りはほとんどいません。捨てられると思っているのです。それは自然な感情でしょう。捨てられると思っているのです。それは自然な感情でしよう。

でもここでは「かわいそう」と思って諦めてはいけません。いわば母親が保育園に子どもを預けるときと同じ。初めは身をきられる思いがするかもしれませんが、決断が肝心。それは介護者の心身の健康のため。やつれきって暗い顔をした人に介護されて嬉しい人がいるでしょうか。

しかも実際にお年寄りが施設で世話を受けると、催し物は楽しいし、友達はできるし、職員はやさしいしで、「また行きたい」と考えを変える人が多いのです。公的サービスの利用は親を放置するということではありません。最後まで介護をまっとうするため、親のためなのです。

  いずれ介護は役得だと気づくときがあるでしょう。間近に見ることができた老いは、自分の老後に活かせます。しかも自分がいるからおばあちゃんは元気でいられる。私は役に立っているんだという自己肯定の気持ちがわいてきます。

  介護保険制度が変わり、これまで利用していたサービスを利用できない人も出てくるでしょう。でも最後は人と人。諦めないで自ら行動し、誠心誠意、きちんと主張することが今後ますます重要になってくるはずです。



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