TOP   田舎都会通信  蕎麦酔夢「吉田村」  写真で語る   ブログ   リンク集

◎ 「がんばらない介護のすすめ 」その1 野原すみれ さん



  野原すみれ・さんは、旧大野町の百年の森づくりを応援してきた・横浜の高齢社会をよくする「虹の仲間」の副代表です。介護に関する本を、多数執筆しています。

  介護のスタンスは、「がんばらない介護」。介護を最後までまっとうするためには、がんばらない介護をすることと結論づけています。

  自分が幸せでなければ、介護を受ける人も幸せになれないから。が持論。


  がんばらない介護のすすめ   野原すみれ さん 雑誌 Pumpkin 3月号から抜粋
   「介護の第一の仕事は、介護者自身の健康を良好に保つことだ」



  私は1989年から15年間、実母と義母を介護し、在宅介護者のつらさを身をもって知りました。その体験から「よい介護とは がんばらない介護である」と明言したのです。

案の定お年寄りの方からは、「昔から若い人がお年寄りをじゅんぐりに世話をしてきた。今の若い者はやりたくないから、手を抜きたいってことじゃないか」という反論がでました。でもそれはまったく違うのです。

  人生50年の時代には、3か月、あるいは半年で介護は終わりました。でもいまや長寿の時代。介護も長期化して、5〜6年は当たり前。10年以上も全然珍しくありません。

  介護を30年以上続けたという娘さんに私はこう言われました。「母は親ではない、鬼です。これまで一度だって ありがとう という感謝の気持ちを言われたことがありません。母より私の方が先に逝ってしまいます」。

  介護を続けられる期間は、いいところ3年が限界でしょう。それなのに明かりの見えないトンネルの中で、ぬかるみに足をとられてもがいている。そんな頑張る介護も3年を超えると、変調をきたして虐待に走ってしまうことも。

少し前まで一緒にPTÅ活動をした人たちはおしゃれして、今日はボランティア、今日は歌舞伎座に行くという話しを耳にすると「なぜ私だけ、親のウンチまみれと闘ってなくちゃならないの」という疑問が当然出てくるでしょう。「ああ、この人さえいなければ、私の人生ラクなのに」と。

それでお尻をつねったり叩いたりしてしまう。私は性善説を取る人間ですけれど、だれでも鬼を抱えています。がんばりすぎて体が疲れてくると、その鬼が暴れ出します。それに虐待に走ると、介護が終わった後の人生を「なぜあんなことをしてしまったのだろう」と悔い悩みながら送らなくてはなりません。

  虐待もせず、病気にもならず、一生懸命の介護をまっとうされた幸運な方は、どうなるのかというと、燃え尽き症候群に陥ってしまう。「これで終わった、やれやれ」と思うのだけど、目標が突然消えちゃう。するとフーと気が抜けて、今度は自分がうつ病や、認知症になってしまう。

         がんばらない介護ライフを送るための6か条
            1  公的介護サービスを使いこなす
           2  自分へのごほうびを忘れない
           3  介護は役得だ
           4  夫はかならず味方につける
           5  逆らわないけど、従わない
           6  待っていても変わらない。行動を起こそう


  認知症の奥様を施設に連れてこられたご主人が言いました。「私が悪かったんです。妻が介護で大変な思いをしていることは十分にわかっていたけれど、仕事が忙しく、家庭を顧みる余裕がなかったのです」。一段落したら旅行にでも連れていこうと、心のなかでは考えていたとおっしゃる。けれどそういう言葉をまったく発しなかった。

お父さまを看送られて、さあ、温泉にでも誘おうと思ったら、あんなに働き者だった奥さまがソファに座ったまま、動こうとしなかったそうです。悔やんでいるご主人の奥さまを見る眼差しのおやさしいこと。

でも病気になってからでは遅い。病気になる前にやさしくしてもらわないと困るんです。共倒れや親より先にあの世に逝く前に、一人だけで抱え込む「がんばる介護」にぜひサヨナラをして下さい。介護の第一の仕事は、介護者自身の健康を良好に保つことです。


目次へ

TOP   田舎都会通信  蕎麦酔夢「吉田村」  写真で語る   ブログ   リンク集