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◎がんばらない介護と老いじたくのすすめ その5



  「有償介護のススメ」

  先ほどよい介護とはがんばらない介護であるとお話しましたが、私は有償介護をすすめています。

有償介護には必ず反対者がでます。親の世話をして親のお金をもらうなんてとんでもない。介護をするのは子どもとして当然と言う正当論です。しかし、長引く介護を元気で送るためと、介護の平等性、活かしたお金の使用法を考えると、実によい方法です。確信をもって、おすすめします。

  ただし、お父さん、お母さんに「預金通帳と印鑑を出してくれよ。これで介護をした者にお金をあげるんだから」とお話しても「いいだろう」というお年寄りはまずいません。

  人の介護を受けなければ生きていけない状態になったときは、お世話をしている方たちで相談をして、そのお金を有償介護として、時給いくらでと決めて活用すればよいでしょう。

  有償介護は、お金をもらうことによって介護の仕方が変わります。お金をもらうのに、ただそばにいて、嫌々ながら介護をするのは申し訳ないと思います。ですから、いろんな介護などの勉強をして、とてもいいケアをするようになります。密室で行われていた介護は、いろんな方が出入りすることによってガラス張りになります。そういう中では絶対に虐待は起きません。お母さん、お父さんにとっても、入れかわり立ちかわり懐かしい子や孫が自分の目の前にあらわれるわけですから、とても喜ばれます。

  逆に、たくさんの財産が残っていると、遺産問題で騒動が起きます。財産をたくさん残してあの世に行ってしまうと、その遺産相続の争いでお通夜の晩に灰皿が飛ぶ、葬儀が終わったら口もきかなくなったとなれば、亡くなった親御さんは悲しいでしょう。財産はその人が生きているうちにその人のために使う、というのが一番いいことです。残しておくと、ろくなことがないのです。

  15年前、私の実の母が兄夫婦と住んでいたのですが、寂しくてひとりではいられなくなりました。玄関が別の理想的な二世帯住宅でしたが、用もないのにしきりと兄嫁を呼ぶ。兄嫁はノイローゼになってしまった。「お母さん、御用は何ですか」と言うと、「お茶入れてほしい」とかなんとか、どうでもいい用事をさせる。それが終わって、やれやれと思って帰ると、またベルが鳴る。一日に何十回となく上がり降りをさせられる。それで私たちの出番となりました。小姑も含めてみんなでお世話しようと。

  そして、私は介護した者が損をすることのないように、母のお金を介護した人みんなに分配する有償介護を提案しました。

家族からは、「親のお金をもらうなんて、とんでもない」と、怒られました。それでも私は説得をして、高齢社会を乗り切るにはそういうことでもしないとだめです。今は自分たちの親だけど、これが10年後、20年後には隣にひとりで住んでいるおばあさん、おじいさんのお世話をしなくてはならない時代が必ず来るよと。

  そして、15年前に、有償介護で母を看取りました。お金をもらっているからいい加減なことはできません。兄弟がいつも顔を見合わせます。兄弟がとても仲がよくなりました。母にとってもうれしかったことだと思います。

  母が亡くなった後、有償介護もらったお金をみんなで出し合い、母の故郷や思い出のある場所を訪ねる旅をしました。さらに、兄弟の絆が深まりました。

  次は「老いじたくのススメ」 つづく


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