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◎ 「木を植えた人」「木の成長を支える人」



  新潟県・山北町に「縁むすび係」という部署があるという。地域の未婚者対策が目的。紹介する「大野森づくり応援団」に、前者と目的は違うが「縁むすび」の役割を果たしてほしいと願っている。

  横浜の高齢社会をよくする「虹の仲間」の会員30人が、きじひき高原「百年の森づくり」に協力するため、4回目の来町をしたのがこの春。遠い横浜市から、80歳を越えた会員は4回全て参加。会員の娘さんお孫さん、会員のお子さんのおじいちゃんおばあちゃん、参加者の裾野が広がっている。

  一方大野森づくり応援団は、町が進めている「百年の森づくり」を応援する頼もしいボランティア団体。この団体が今年の総会で、虹の仲間が植えた植樹地の下刈り草をすることを決めた。「木を植えた人」は遠くの人。「木の成長を支える人」は近くの人。簡単な原理の助け合いに頭が下がります。

  禅の言葉に「曹源一滴水(そうげんいってきすい)」という言葉がある。一滴の水が山から流れると、そこには小川ができやがて大河となる。よく使われる言葉ですが、虹の仲間が協力してくれた一本一本の木、地球温暖化防止の一滴水となることでしょう。

  大野森づくり応援団の会員・勝碕捷二さんが、下刈り草の様子を北海道新聞に投稿されたので紹介いたします。人と人のつながりは、やがては地域と地域のつながりになり、そして子孫のためにつながる、ことが伝わってきます。


  「地域と地域の結びつき」  勝碕 捷二 (琉球少林寺空手道月心会・北海道本部長)
                       {北海道新聞 平成17年7月23日 「立待岬」掲載}


  6月下旬の一日、曇り空の下で植樹地の下草刈りを行った。場所は大野町にあるきじひき高原の中腹。参加したのは私も所属しているボランティア団体「大野町森づくり応援団」(楢山文治会長、32人)のメンバー7人。対象となった植樹地は横浜で高齢者による地域づくりを進めている「虹の仲間」の会が植樹した場所だ。

  下刈り草は雑草の密生による蒸れを防ぎ、風通しを良くして木々の成長を促す。樹木の生育に欠かせない作業でもある。

  大野町と「虹の仲間」の交流のきっかけは、1998年に副代表・三井君子さんが「老親介護は今よりずっと楽になる」を出版したことに始まる。それを読んで感動した大野町長・吉田幸二さんが横浜まで足を運んだ。三井さんも大野町が展開している「百年の森づくり」に共鳴して同町を訪れた。以来、「虹の仲間」の植樹は2000年に始まり、今年5月で4回を数えた。

  一方、森づくり応援団は昨年2月、「自然とのふれあいを通じ、健康と心身の涵養を図る」ことを目的に生まれ、「散策路の手入れや緑の交流事業への協力」をすることになっている。会員の大半が60歳以上の高齢者で夫婦参加が多い。

  この日の対象面積は奥行き30m、横100m。植えられた苗木はブナ、エゾマツ、ミズナラなど300本近い。2m前後に育った木の周りを牧草の一種オーチャードグラスを中心に赤クローバー、タンポポなどが取り囲んでいた。

しかし、肩からつるした刈り払い機は体を左右に振るたびに雑草を確実に切り取っていった。50分ほどで雑草地を芝地に変えた。植樹地より一段低い100m四方が雑草地になっており、背丈ほどの雑草が下の道路から植樹地への視界を妨げていた。一人が「練習のつもりで刈ってみるか」の声を掛けたのをきっかけに作業が始まった。

  作業を終えて刈り取った傾斜地を下から見上げた。晴れ上がった空の下に雑草地はまるで芝居舞台のように平面に広がり、その上にある植樹地の木々の一本一本が舞台背景のように展開されていた。その見事さに「植えた人が見たら喜ぶだろうな」と思った。

  別の地域の人が植え、地元の団体が下草を刈って育てる。植えた人が見に来て交流を深める。人と人とが隔絶する現代にあって、離れた地域と地域を結び付けるささやかなパターンの一つを見たような感じがした。


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