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◎大野山菜物語



  小さい頃、我が家の裏手の山すそは「山菜」の宝庫だった。「かたくり」の花も群生していたなあ。その葉を取ってきて・おしたしにして食べた。しかし、そのカタクリ、跡形もなし。

「玉ぴろ」、知ってますか。根元にラッキョのような小さな玉がついてるましたね。それに味噌をつけて生のままかじった。これがまたおいしかった。しかし、これも今は姿なし。

それに 春さきは、「しろ」(ヒロ)と呼んでいたものが。ネギの超小型形で、卵とじや味噌汁として母は調理、これがまたおいしかった。しかし、これも見つけることができなくなった。

  大野町文化財保護研究会報 「ぶんぽけん」 に、大野町出身で町文化財保護研究会員・大石圭一さんの 「大野山菜物語」 が掲載された。裏山の昔を思い出させるてくれるこの文、紹介します。みなさんも、しばしタイムスリップしてみてはいかがですか。



  「ヒロはアサツキであった」(大野山菜物語)  昭和56年4月24日付北海道新聞掲載記事
                              大石圭一 さん 元北海道水産学部教授



  ヒロがアサツキであるのを今始めて知った。つい最近、大野林二郎・先生の書かれた本 「函館山の植物」 の中のアサツキの写真を見たらヒロであった。活字のアサツキには何度も接したが、わからないまま、奥地のどこかに生えている無縁のものと決め込んでいた。

  ヒロは雪の消えるころ、マンサク(フクジュソウ)とほとんど同時に姿を見せる。雪の隙間に黄色のヒロの芽がチラリと見えたらスコップを入れる。勾玉そっくりで小指大の茎が出てくる。卵とじにすると春の味がして、長い冬が終わった実感が体のすみずみまでにゆきわたる。

  この機会に函館近くの植物の思い出をたどってみる。小形のタマネギのようなタマピロを生のまま酢味噌で食べたことがある。タマピロはこの本にはない。カタクリもない。もともとこの本は函館山の植物600種から277種を選んだもので、この中に見覚えのあるのは68種、名まで覚えているのが34種ある。この本に載らなかった323種の中には、私の知っているのも少しありそうだ。

  コジャクという漬け物にする夏の植物がある。この本のヤブジラミに似ているが、これに似たコジャクもあるとのこと。あるいはこれがコジユクかも知れない。皮をはぎ生で食べるニヨがある。似た形で苦味のないアマニヨもある。摘み取ると雨が降ってくるというアメフリバナもあり、この本の中ではキクザキイチリンソウという名になっている。

  身の周りの植物を覚えたいと思うが、キクザキイチリンソウという名では、いまさら覚える気になれない。なじみにくい語感で覚えられそうもない。また覚えてもすぐ忘れそうで、年も年だし子供の時に覚えておけばよかったと、すぐグチになる。大野先生の本を子供の時に手にしていれば、身近の植物をよく覚えられたであろうし、その後の人生ももっと充実していたと思う。



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