タイトル 1999年5月1日発行
No.77 第72号
しらかば薬局

発行:しらかば通信編集委員会

今回は、患者さんからの要望にお答えして、アレルギーが原因によるアトピー性皮膚炎について道南勤医協函館稜北小児科の高柳医師に書いていただきました。

●△■ アトピー性皮膚炎の治療とケア ○▲□  
人間には、体に侵入した異物を、異物だと認識して、それを排除するという働きが備わっています。その働きが過剰に起こってしまったのがアレルギーです。アレルギーによって起こる病気には、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、花粉症、じんましんなどがあります。
特に今回は、アトピー性皮膚炎を取り上げてみます。


アトピー性皮膚炎はなぜおこる???・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 アトピーの治療戦略も、ずいぶん進歩してきました。基本的には、腰を落ち着けてじっくりと取り組めば、かなり改善させることができます。多くは子どものうちに治してしまうことができるものです。 
今のところ、アトピー性皮膚炎は、「何らかの理由により、外からの刺激に対して皮膚が反応しやすくなっている状態」と考えられています。 
 アトピー性皮膚炎を悪化させる因子は、一つだけではありません。様々な要因が複雑に絡み合って、皮膚の炎症を悪化させています。 
 もとからのアレルギー体質、皮膚のあぶら分(セラミド)の不足、ダニ・食物などのアレルギーの原因となる物質、汗やよごれ、細菌などの影響、かくことによる悪化、天候や急な気温の変化、そして心理的な要因も影響しています。
 従って、ただ軟膏を塗るだけとか、ただ一つの因子、たとえば、食事除去だけをしていてもよくなりません。環境整備、食生活の注意、スキンケア、心のケアなど、その原因を考えた総合的な治療を行わなくてはなりません。アトピー性皮膚炎の治療は、長くかかります。細かい変化に一喜一憂するのではなく、じっくり腰をすえて構えることが肝心です。

スキンケアはどのように???・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

アトピー性皮膚炎は、肌へのさまざまな刺激が引き金になって悪化します。そこで、日頃の肌の手入れーースキンケアが、大切な治療となります。
 入浴の制限はありません。むしろ、汗やあか、泥などにより、皮膚の炎症が悪化します。おふろでは、せっけんを使ってよく洗い落とすようにします。ごしごし洗い過ぎるのはよくありません。手のひらで、洗うのがいちばんよい方法です。ナイロンタオルや、ヘチマなどは使わないようにします。せっけんやシャンプーは、特別な物は必要ありません。香料や色素などの混ざりものの少ないものを選ぶようにします。入浴剤などで荒れることもあります。特に敏感な人は、医師と相談して下さい。
 身につける物は、なるべく綿1OO%のものに。毛、化繊の物は、刺激になることがあります。肌着に残っている洗剤や、漂白剤、蛍光剤によって肌が荒れる場合もあります。合成洗剤をやめて粉せっけんを使うようにしましよう。
 6ヶ月ぐらいまでの赤ちゃんは、脂肌(あぶらはだ)の傾向にありますが、一、二才を過ぎると、かえって乾燥するようになります。乾燥が強いと、外からの刺激に対して弱くなってしまいます。特に冬場は、暖房の影響もあり、空気が乾燥するので注意が必要です。部屋の湿度を適度(50〜60%)に調節して下さい。 
 皮膚の乾燥傾向が強い場合には、保湿のための軟膏(なんこう)を処方してもらい、入浴後などに使うようにします。
 土いじり、水遊び、プールなどで時に悪化することがあります。通常は制限する必要はありませんが、重症の場合には、医師と相談した方がいいでしょう。
 ときどき、海水浴や温泉でよくなることを経験します。塩をはじめとするミネラル分には、かゆみを抑えたり、余分な皮膚の脂や汚れを落としたりする働きがあります。つまり、天然のスキンケアになっているわけです。ただし、すべての人に当てはまるわけではありません。刺激が強すぎて悪化することもあります。



大切な軟膏療法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

スキンケアのなかで、いちばん大切なのが、実は、軟膏療法です。上手に軟膏を使うことが、アトピー性皮膚炎の治療の一番の基本です。  アトピーの子の肌は、とても敏感なので、ちよっとした刺激で、かゆくなったり、ぶつぶつができたりしてしまいます。アトピーが治りづらくなっているのは、『なにかの刺激によってかゆくなる→かく→かく刺激によって肌が荒れる→かゆみが強くなる→さらにかく→ますます炎症が強くなる』という悪循環になっているためです。かかないようにするだけでも、アトピーはよくなっていきます。小さい子に「かくな!」といっても無理があります。そこで、上手に軟膏を使って、この悪循環を断つようにすることが大切になってきます。アトピー性皮膚炎の時に使う軟膏は、肌の乾燥をおさえる保湿剤と肌の炎症を抑える抗炎症剤です。ステロイドの軟膏は、抗炎症剤の方に入ります。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  私たちの肌は、一番外側の角質層が適度なしなやかさを保っていて、外からの刺激に対して、皮膚を守る働きをもっています。アトピー性皮膚炎の患者さんは、体質的に、皮膚のあぶら分(脂質)が不足していることがわかってきました。
このあぶら分が不足すると、肌から水分が逃げや すくなります。水分が足りなくなると、肌を守っている角質がもろくなって、はがれやすくなっていきます。外からさまざまな刺激を直接受けるようになって、炎症がおこりやすくなり、アトピー性皮膚炎も悪くなってしまいます。
まず、適切な保湿剤を使います。ワセリン、ビタミンE軟膏、尿素軟膏、ヘパリン類似物質軟膏などがあります。私たちのところでは、白色ワセリン(ブロペト)をよく使っています。ワセリンの効果は、過剰な水分の放散を防ぐことと、外からの刺激に対して皮膚を保護することです。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  ワセリンは、副作用を気にせず、何回でも塗れるところがいいところです。寝る前にもう一度ぬり直したり、外出前に、外に出ている部分に集中的に塗ったりすることもできます。入浴の仕方の工夫も大切です。ぬるめのお湯に長くつかるようにし、肌に十分な湿り気を与えます。せっけんは、ほこりや汗、ダニなどでよごれたあぶら分を落とすために必要です。入浴の後は、そのままにしておくと、かえって乾燥が進んでしまいます。体が湿っているうちに、はやめに保湿剤を塗るようにします。少しべたつくくらいに、たっぷりと使うようにしましょう。


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