タイトル 1999年12月1日発行
No.62 第58号
しらかば薬局

発行:しらかば通信編集委員会

夏至も過ぎいよいよ夏本番ですが、
お身体には充分注意して下さい。
今回は読者の方のご要望にお応えして、
過敏性腸症候群について、
道南勤医協函館稜北病院院長、犬童伸行先生に書いていただきました。

過敏性腸症候群について

はじめに
  50才代の男性Aさん、何年間もお腹の調子が悪い、お腹が張ったりゴロゴロ鳴る、 便通が不純で便秘になったかと思うと下痢したりする、 便が少ししか出ず残便感がありすっきりしない、便の出が悪いとお腹が差し込んだりする、 お腹が気になって仕事に打ち込めないし憂鬱な気分になる、 休みの日にはいくらか調子が良いことが多い、いくつかの病院で検査を受けてみたが、 どこでも「何とも無い」といわれている。
  Aさんの症状は典型的な過敏性腸症候群であり、 消化器外来を受診する患者の15−20%を占めるといわれています。
 歴史的には1871年、南北戦争の従軍軍医であるダ・コスタが兵士たちの間で 心臓神経症が多発することを報告した(ダ・コスタ症候群)が、 同時にこの心臓神経症では下痢を伴うことが多いということも述べています。
すなわち粘液を伴う下痢があること、それらの症状と精神的因子との間に密接な関係があること、 そういう患者の直腸を調べても潰瘍などは見られないこと、などを報告したのが始まりです。
 戦争という死の恐怖に伴って多発したことでわかるように、 この病気はストレスに関連しており、オートメーション化の進んだ 1950年代のアメリカの自動車工場などでは風邪に次いで多い病気となったとの報告も見られました。
今では過敏性腸症候群(IBS)と呼ばれ、もっともポピュラーな心身症の一つです。  

IBSの症状と分類

IBSでよく見られる症状を下記に整理してみました

IBSでよく見られる症状                     
@慢性に経過する下痢・便秘・交代性便通異常  
A腹痛・腹部膨満感              
B排便・排ガスによって軽快する腹痛      
C腹痛を伴う下痢・頻回の排便         
D残便感                   
E兎糞状の便・粘液排泄            
F頭痛・頭重・疲労脱力感・動悸・不安・不眠  

IBSの分類はいろいろなものが使われていますが、私は下記に従って診療しています。

IBSの病型分類 
@下痢型(神経性下痢)
A便秘型(緊張性便秘)
B下痢便秘交代型
C粘液排泄型
Dガス型


IBSの原因
  IBS発症の原因については簡単ではありませんが図1のようにまとめられます。
ストレスによって自律神経が緊張し、 消化運動機能の亢進による下痢・便秘・腹痛・といった症状が出現しますが、 症状の程度には体質的要因が大きく関与し個人差が見られます。
 またこれらの症状を重大なものと思い込み、 その不安から更に自律神経の緊張を引き起こしてしまう性格的な要因も重要で、 これらの悪循環がIBS発症のメカニズムと考えられます。

IBSの診断と治療
  IBSの診断は上記の特徴をよく聞き出せればそう難しいものではありません。
  ただしこの病気のことをよく知らないドクターにかかると、 「検査で異常が無いから何でもない」とか「神経だ」とか言われることもあるでしょう。
  一方で検査もしないで、症状だけでIBSとして片づけてしまうことの危険性にも 気をつける必要があります。
  治療は、軽症なら検査を受けて説明を受けて十分納得出来れば、 それだけで良くなってしまうことも多いものです。
  病型に応じていろいろな薬も使われます。安定剤や漢方薬なども有用です。
  ストレスが関係していることが多いため、それらに対する対処が重要ですが、 実はこれが大変難しく、カウンセリングなど専門家の援助が必要なケースも多いと思われます。
  食事療法はそう重要ではありませんが、症状を悪化させるような食品は避けること、 朝食べないなどの不規則な食生活は改善することです。
  症状にとらわれすぎず、趣味などを楽しみながら明るく前向きに治していきましょう。


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