タイトル 2000年6月1日発行
No.68 第64号
しらかば薬局

発行:しらかば通信編集委員会

桜の花びらも散り、だんだんと暖かくなってまいりました。
皆様はいかがお過ごしでしょうか。 今回は、歯と鼻の意外な関係について
上田歯科クリニックの上田昇先生にお話していただきます。



  人体に生理的に有る腔内に化膿性炎症が生じ濃汁がたまっているのを蓄膿といいますが、
顔面(上顎じょうがく)にも鼻の周囲に上顎洞、篩骨(しこつ)洞、前頭洞、蝶形骨洞と呼ばれる空洞(副鼻腔)があり、この部位の内面の粘膜が感染して炎症を生じたものが副鼻腔炎です。
昔はよくみかけた疾患で、子供がよく鼻汁を垂らしていたのを記憶していますが、最近はあまり鼻汁を垂らした子供を見かけなくなり、代わってアレルギー性鼻炎が見られるようになっています。
これは、寄生虫が人体に寄生しなくなったせいといっている学者もいて、時代の流れで病気も変わる事を示しているのでしょう。
歯科と関係が深いのは上顎洞で、歯の根の先がこの空洞に近いので、歯及び歯周組織の炎症が容易に上顎洞に移行します。特に小臼歯、大臼歯の虫歯から歯髄が感染しそこの炎症が上顎洞の洞底の骨を溶かしていけば容易に上顎洞の粘膜も感染し上顎洞炎を併発してしまいます。
このように歯の炎症から上顎洞の炎症を起こしたものを
『歯性上顎洞炎』と呼びます。決して稀なものではなく、上顎洞炎の1割ほどを占めるともいわれています。
症状としては、上顎洞部の痛み、偏頭痛、頭重感、眼痛、鼻漏、鼻閉、臭覚減退、などの上顎洞炎の症状と同じで、耳鼻科を受診して歯が原因であると指摘されることが多いのですが、顔が腫れたり、歯の痛みで歯科を受診して上顎洞まで炎症が広がっていると、レントゲンを撮影して指摘をうけることもあります。
逆に歯痛で歯科を受診し歯が原因ではなく、上顎洞炎と診断され耳鼻科に紹介されることもあります。
虫歯もないのに歯が痛いときはこの上顎洞炎を歯医者は疑います。
歯科にもパノラマレントゲン写真というのがあり、歯と上顎洞の関係がすぐ解りますので診断は容易です。
また、上顎洞の腫瘍(悪性も良性も有り)が原因で歯痛を生ずることもありますので歯の痛みも放は出来ませんね。
話がとびますが、左下の奥歯の痛みは心筋梗塞の放散痛の場合も、稀ですがありますので注意が必要でしょう。
歯の痛みも原因は歯ばかりではない事を覚えていてほしいと思います。
シソーノーロー(辺緑性歯周炎)が進行して周囲の骨を吸収し上顎洞下底の骨をとかしても起こりますので虫歯がないからといって安心は出来ません。




 【 治療方法 】

 最近の上顎洞炎はすぐ手術はせず、抗菌剤の服用で保存的に治療するのが一般的です。
しかし、歯性上顎洞炎は歯の治療が最優先されます。
虫歯や、感染した歯髄の根管処置をして感染源の治療をします。
もし歯を残せそうもなければ抜歯しなければなりません。
抜歯した場合に良く口腔と上顎洞が交通し、上顎洞内に溜まっていた濃が口腔に流れ出る事がありますが、そうすれば上顎洞炎の治癒も早くなります。
  抜歯後に生じた口腔と上顎洞の交通部分はほとんどの場合は自然に閉鎖されますが、骨の破壊が大きい時には自然閉鎖されない事があり、手術で閉じてやらねばなりません。
歯科では抜歯して上顎洞と交通が認められれば、患者さんに説明しますので、その時はなるべくうがいをせずに、傷をそっとしておき、安静を保ってください。
うがいをしたら鼻から水が出てきたとか鼻から血が出る事もありますが、ほとんどの場合は問題ありません。
抜歯した傷が閉鎖されない時はタバコが吸えないとか、ストローで水物が吸えないとか、水物が鼻から出るなどの症状がありますのですぐに気がつきます。
兎に角、虫歯やシソーノーローを放置して骨を溶かさない事が予防の原則です。
又、傷が閉鎖されないのを放置すれば上顎洞炎は悪化しますので注意が必要でしょう。


◎歯性上顎洞炎

 新生児では上顎洞は、中鼻道から外方に延びる狭い副腔であるが、
歯の萌出が終わり、春期発動期になとほぼその大きさは標準大に達する。
成人において洞は頬骨突起、前頭突起および歯槽突起などの諸所に凹みを作る(頬骨窩、前頭窩、歯槽窩)。
歯根と洞との関係については個人差があって一律には論ぜられないが、第2小臼歯以後3本の臼歯根尖とはきわめて接近し、時には洞内に向かって根尖に相当する隆起を形成している事すらあるしたがって、これらの歯の根尖部歯周炎は容易に洞側骨膜を経て洞骨膜に波及し、急性及び慢性の上顎洞炎を誘発しやすい。
               


[しらかば通信] [参考資料]