タイトル 2000年3月1日発行
No.65 第61号
しらかば薬局

発行:しらかば通信編集委員会

3月になり、暖かい日が次第に多くなってきます。
春の陽気は日中の眠気を誘います。
しかし、その眠気は春の陽気ばかりが原因でしょうか?
今回は最近話題の病気「睡眠時無呼吸症候群」について、
市立函館病院耳鼻咽喉科、小林一豊先生に書いていただきました。

睡眠時無呼吸症候群


1)睡眠時無呼吸症候群とはどんな病気ですか?  
起きている時は異常ありませんが、睡眠時に無呼吸(10秒以上続く呼吸停止)が1時間に5回以上生じたり、7時間の睡眠中に30回以上の無呼吸が生じる病気です。このため動脈血の酸素濃度が低下し、昼間の眠気など色々な症状を呈するようになります。

2)睡眠時無呼吸症候群の原因は何ですか?
睡眠時に気道(肺への呼気、吸気の通路)が狭くなるのはある程度自然なことです。眠って緊張がとれると気道を広げている筋肉がゆるみ、舌や口蓋垂(のどちんこ)が重力に引かれて下に沈み気道を狭くします。健康な人でもこうした状態では気道が狭くなり、軽いいびきをかくこともあります。
睡眠時に無呼吸になる人は、肥満、扁桃の肥大など気道が正常者より更に狭くなっています。このため気道が睡眠時に閉塞して無呼吸になると考えられています。気道を狭くする要因として、ほかにはアルコール飲用やあおむけに寝ることなどがあげられます。
睡眠時無呼吸症候群の患者は40歳代から増加しますが、これは高齢になるほど気道周囲の筋力や組織の弾力性が低下し、気道がつぶれやすくなるためです。閉塞部位はつぶれやすい、口蓋垂から舌根部(舌のつけね)までの部位がほとんどです。

3)睡眠時無呼吸症候群の症状はどんなものですか?
睡眠中に無呼吸がおきても、本人は眠っているのでその症状に気がつきません。大多数は家人が大きないびきや無呼吸、幼児では陥没呼吸(胸の吸気時の陥凹)、チアノーゼ(低酸素のため皮膚の色が黒っぽくなること)に驚いて相談する場合がほとんどです。
いびきは成人、小児共にほとんど必発の症状できわめて特徴的です。いびき以外では昼間の傾眠、鼻閉塞感、息苦しくなり睡眠時に眼がさめる、疲れやすくなる等があります。

4)睡眠時無呼吸症候群に影響を与えるものはなんですか?
気道を狭くする要因として代表的なものは、肥満、扁桃肥大、睡眠時にあおむけに寝ること、アルコール(酒)を飲むことなどがあります。これはいびきが大きくなる原因とほぼ同じです。

5)睡眠時無呼吸症候群はどのように診断されるのですか?
近年コンピューターの進歩と共に開発されたアプノモニタ(簡易睡眠呼吸検出装置)でスクリーニング検査を行います。この器械は被験者が簡単に操作出来るため、在宅で実施できる睡眠呼吸モニタ装置です。鼻呼吸センサーを鼻の穴近くに装着して鼻気流を測定し、気管支センサーをのどに装着して気管音を測定します。指センサーで動脈血の酸素濃度を終夜連続的に記録します。測定が終わった後にコンピューターに記録を転送して無呼吸発作状況、無呼吸継続時間を表示します。  
閉塞部位の診断には内視鏡検査やレントゲン、CT検査などを行います。   
 
6)なぜ最近睡眠時無呼吸症候群が問題になっているのですか?  
    睡眠時無呼吸症候群は今まで検査が難しいため、あまり社会に知られていなかった病気です。近年、アプノモニタなどの検査器具が発達したため簡単に診断できるようになり、患者も多いことが分かってきました。特に肥満する中年から発症する人が多いようです。
睡眠時無呼吸症候群は高血圧、心臓病、脳梗塞などの疾患と高率に合併します。また糖尿病、肥満、高脂血症などを伴うことも分かってきました。
さらに睡眠時無呼吸症候群では昼間の眠気のために交通事故をおこすことが多く、患者個人の問題にとどまらず、社会的問題を引き起こす可能性が高い病気です。そのため患者の早期発見そして適切な治療が重要と考えられ、マスコミで報道されることが多くなってきました。
 
7)睡眠時無呼吸症候群の治療はどのようにしますか?
睡眠時無呼吸症候群治療には外科的療法と保存的療法があります。
外科的療法には口蓋垂・軟口蓋・咽頭形成術が一般的な手術です。
小児では大半の原因が扁桃やアデノイド肥大ですので扁桃摘出術やアデノイド切除により著明な症状の改善効果が見込まれます。保存的療法では歯科装具による治療やnasal CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸)などがあります。
nasal CPAPは睡眠中の上気道閉塞を防止するための器械です。鼻マスクを頭部に固定し、空気呼吸器より一定の圧の空気が鼻マスクに送り込まれます。この加圧された空気は上気道を閉塞する圧より大きいため、患者はこの空気を吸入し無呼吸もなく熟眠することが出来ます。

8)睡眠時無呼吸症候群を疑った場合どの科を受診するのですか?
   症状にあわせて、耳鼻咽喉科、内科、小児科などを受診して相談されるのが良いと思います。

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