( Vertigo or dizziness due to the unstable blood pressure )

1.疾患概念
 血圧異常を惹起する機構はきわめて複雑であるが、血圧が安定している場合、めまいは普通発症しない。血圧が不安定で変動の大きい場合、主として椎骨脳底動脈系の循環不全の左右差と関連してめまいを発症する。
 血圧の変動はストレスに満ちた近代生活、個人のライフスタイルと関連するところが多いので大切である。

2.病歴からの診断
1)めまいは必ずしも回転性ではない。非回転性めまいの方が多い。
2)めまいの持続時間は比較的短い(分の単位)。
3)逆上感、肩こり、耳鳴、頭重感などの不定愁訴を合併することが多い。
4)高血圧、低血圧、起立性低血圧(起立性失調症)、動脈硬化、貧血、不整脈などの心臓疾患、高齢者、薬物服用者など判明した場合は注意すべきである。
5)めまいに随伴して難聴は伴わないことが多い。
6)めまいの発作時、血圧は上昇することが多い。
1)、2)、3)、4)の条件を満たせば、血圧異常によるめまいを疑う。

3.検査からの診断
 一般に聴力検査、平衡機能検査に異常があれば脳・内耳循環不全のめまいに該当するので、検査所見のないことが特徴である。
1)高血圧、とくに境界高血圧、低血圧の存在、および血圧・心拍数の変動の観察
例えば
@ シェロング試験の経日的検査(外来で、スクリーニングテストとして最も実施し易い)。
A 1日血圧記録による血圧の変動の大小、血圧サーカジアンリズムの異常、心拍数の変動の大小、とくに血圧・心拍数の関係から圧受容器反射の感度測定は将来有用と考える。
2)自律神経機能(全身的)
 交感神経機能、副交感神経機能検査のため R-R間隔の変動、アトロピン、プロプラノロール静註による心拍数の変動の測定。
3)頸部交感・副交感神経機能(局所的)
 これらの左右差を検討するため、アシュナー試験、氷水負荷皮膚温回復試験、瞳孔検査など。
4)椎骨動脈の血流検査
 ドップラー法による超音波血流計、digital subtraction angiography による血流の異常、左右差。
5)CTにて異常所見のないこと
6)環境ストレス要因の調査、心理的検査
1)の検査で高度の疑いをもち、2)、3)、4)の検査で異常を認めれば診断は確定する。

4.病期の判定
1)めまいの活動期は一般に血圧の変動大、間歇期は心拍数の変動大、治癒期はこれらの変動が少ない。 
2)めまいの活動期は主として副交感神経機能低下と交感神経機能亢進、めまいの間歇期は副交感神経機能低下による相対的交感神経機能亢進。

5.予後判定基準
1)糖尿病、Shy-Drager 症候群など器質的自律神経系の異常のないものは予後良好。
2)若年齢者は一般に予後良好。
3)薬物療法に反応するものは予後良好。

6.疾患についての説明
 血圧異常によるめまいには、全身の血圧調整に関与する機序を十分考慮しなければならないが、高血圧、低血圧でも血圧が恒常に保持されているとき、めまいの発症は少ない。
 急激な一過性の血圧変動がめまいの発症に大きく関与すると考える。
 したがって椎骨脳底動脈循環不全と病態的に同じ場合が考えられる。
 血圧異常によるめまいの場合、器質的疾患で血圧異常を惹起するものを区別すること、機能的に急激な血圧変動を惹起する機序を解明することが大切である。後者のなかで、圧受容器反射を介する全身的自律神経機能が問題となると考えられる。なお、血圧異常によるめまいの中に、自律神経失調症、心因性めまいの占める役割を検討することが肝要と考えられる。