( Cervical vertigo )

1.疾患概念
 頸部に原因があり、多くの場合頸部の回転または伸展により生じるめまいを意味する。その原因に関しては、頸部の骨、筋、靱帯の異常によるもの、椎骨動脈、椎骨動脈周囲の交感神経線維などにあるとされるが、いくつかの原因が重なったり、連続して起こることも多く、めまいの他多彩な症状を伴うことも少なくない。

2.病歴からの診断
1)頸部の回転または伸展によって起こる各種のめまいを訴える。
2)めまいは一定の頸部運動により反復性に起こり、その頸部運動を継続すると次第に減弱することが多い。
3)頸部以外にめまいの原因となる障害が認められない。
4)めまいの他、頭痛、項部痛、嘔気、冷汗、その他各種の不定愁訴を訴えることがある。
5)過去に機能的または器質的頸部損傷の既往歴があったり、頸椎異常を指摘されたことがあったりする。
6)現在頸椎異常、椎骨脳底動脈循環不全、Barre-Lieou 症候群、むち打ち症などの診断を受けている。
1)〜3)があれば頸性めまいを疑う。

3.検査からの診断
1)直立障害:頸部運動により生じる動揺の増大、転倒傾向
2)頸部運動に伴う異常眼球運動の出現
3)自律神経異常
4)椎骨脳底動脈循環不全の証明
5)頸椎レ線写真上 spondylolysis、osteophyte の存在、椎間孔狭窄などを認める。
6)Adson 徴候、bruit などの内科診断学的所見、Schellong 試験成績などを参考にする。
7)collar test : polyneck の適正な装着により頸部痛の減少、平衡機能の改善をしめす。
8)その他、温度眼振異常(一側性CPまたはDP)、視運動眼振異常、視標追跡能低下、VOR、VVORの異常(gain 低下、位相の遅れ)などをみることがある。

4.予後判定基準
1)頸部運動によるめまいが減衰傾向を示すものは一般に予後が良い。
2)原疾患の程度。
3)立ち直り反射異常が著明なものは予後がよくない。
4)視運動眼振解発状態をみる。
[注] 上記の諸要素を考慮した判定基準は、本疾患の多様性を考慮すると、必ずしもクリアカットにはいかないであろう。

5.説 明
 頸性めまいは、1926年、Barre が cervical arthritis によって誘発されためまいとして発表したものが最初で、今日 Barre-Lieou 症候群と呼ばれている。
 1955年、Ryan & Cope が頸椎異常、特に spondylolysis に起因するめまい対して cervical vertigo なる名称を与え、それ以後、本名称が使われるになったとされる。
 本症は、その起源か3種類に分けて考えるのが妥当とされる。
1)感覚性:頸椎骨棘形成により後根圧迫症状を生じた場合である。筋、関節受容器に影響を及ぼす場合もある。
2)椎骨動脈起源:頭部回転により椎骨動脈圧迫または閉塞が生じる場合である。
3)交感神経性:椎骨動脈表面を囲む交感神経繊維に対する影響により、いわゆる Barre-Lieou 症候群を生じる場合である。
 疾患の病期の判定は困難な問題であり、原疾患との関係において判定する必要があるが、臨床的には、
1)前駆期:頭痛、項部痛、嘔気、手足の冷感、異常感などを訴える時期
2)活動期:頸部運動によりめまい、ふらつきなどを生じ、各種検査成績に異常を認める時期
3)緩解期:めまいはあまり起こらないが、頭位変換眼振や頭振眼振は存在する時期
のように分けることができよう。
 本症の起源は症例によって異なるので、単一疾患としてでなく、症候または症候群として考えていく必要がある。