( Acoustic tumor )

1.疾患概念
 聴神経腫瘍は、内耳道内の第8神経に Schwann 鞘より発生する神経鞘腫で、前庭神経起源の腫瘍が蝸牛神経起源の腫瘍より頻度が高い。
 本来は内耳道内に発生するため、臨床的には、内耳道内の臨床症状を示すが、腫瘍が増大し、内耳孔より小脳橋角部に進展し、小脳や脳幹を圧迫するとそれぞれの神経症候を呈する。
 その早期診断は治療上重要であるため、早期診断を中心に示す。

2.病歴からの診断
1)聴覚症状
@ 中年以後にみられる、次第に進行する一側性の原因不明の感音難聴、耳鳴、時に耳閉塞感に注意する。
A 時に急性の感音難聴の臨床症状を示すため、突発性難聴との鑑別が重要である。
2)前庭症状
 多くの場合は浮動性めまい、あるいは急に身体を動かした時にみられる一過性の不安定感などで、回転性めまいは比較的少ない。
3)その他の脳神経症状
 顔面神経麻痺で初発することは稀。
1)、2) の条件を満たせば聴神経腫瘍を疑う。

3.検査からの診断
1)純音聴力検査で一側性感音難聴
2)後迷路性難聴の所見
3)聴性脳幹反応の異常
4)温度性眼振反応の低下
5)X線検査で内耳道の拡大
6)X線CT、air X線CT、MRI にて腫瘍の明視化
1)〜4)の機能検査で高度の疑いをもち、5)、6)の検査で腫瘍が明視化されれば診断は確定する。

4.鑑別診断
1)突発性難聴
 聴神経腫瘍は時に急性感音性難聴として発症することがあるので、突発性難聴との鑑別が必要となる。鑑別の要点は、めまいの既往がなくて、温度眼振が高度低下の場合、また内耳道拡大の所見がみられたとき。
2)小脳橋角部腫瘍
 聴神経腫瘍以外の小脳橋角部腫瘍との鑑別には、X線CTが役立つ。また、その場合は、内耳道の拡大は認められない。
3)神経血管圧迫症候群
 air X線 CT にて腫瘍が否定され、血管走行に異常を認める。

5.病期の判定
1)内耳道内に限局している時期
 感音性難聴、温度性眼振反応の異常、内耳道拡大、air X線 CT にて内耳道内腫瘍の明視化。
2)小脳橋角部に 2cm位進展した時期
 臨床症候は、上記1)と本質的にはかわりない。ただ、X線 CT にて後頭蓋窩の腫瘍が明視化される。
3)小脳橋角部に 3cm以上進展した時期
 上記1)、2)の臨床症状の他に、歩行障害、左右側方注視眼振の出現、視運動性眼振や視標追跡検査の異常など、その他、三叉神経の症状として角膜知覚の異常、さらに、腫瘍が増大すれば小脳失調、嚥下障害などがみられることがある。
 腫瘍の大きさの判定にはX線、CT、MRI が役立つ。

6.予後判定基準
 予後判定は腫瘍の大きさ、および機能異常の程度による。すなわち、聴力検査所見、平衡機能検査所見、あるいは神経放射線学的所見などで決める。

7.疾患についての説明
 聴神経腫瘍は内耳道内の、主として前庭神経より発生する良性腫瘍で、蝸牛神経由来の腫瘍は少ない(10%以下)。腫瘍は内耳道内に原発し、増大すれば内耳孔より後頭蓋窩に進展する。その早期症状は、内耳道内の前庭神経症状、蝸牛神経症状が主で、顔面神経症状は少ない。すなわち、一過性のめまい感、不安定感、難聴、耳鳴、まれに耳閉塞感がある。その早期診断には病歴上、次第に進行する一側性の感音難聴、一過性のめまいなどを注意する。
 難聴は、時に急性に発症することがあり(約10%)、突発性難聴との鑑別が必要であるが、内耳道拡大の有無、X線 CT などが役立つ。
 機能検査上は、一側性感音性難聴、後迷路性難聴の所見、温度性眼振反応の高度異常などは、聴神経腫瘍を疑う所見となる。近年、温度眼振反応の比較的良好な症例の存在も指摘されており、また、聴力障害の軽度な時期に診断のされる症例も多くなったが、この場合、聴性脳幹反応(ABR)の異常(無反応、T〜X波の潜時の延長、U波以後の波形の消失など)は、聴力の比較的良好な症例に対しても 90%以上にみられる所見である。
 内耳道内腫瘍の確定診断は、上記の機能検査の異常にて存在を疑い、X線学的に内耳道の拡大、air X線 CT 、MRI などで腫瘍の存在を明視化することである。
 腫瘍が内耳道内を充満し、内耳孔より小脳橋角部に進展すると、腫瘍による小脳や脳幹の異常としての歩行障害や、左右側方注視眼振の出現、視運動性眼振や視標追跡検査の異常などが出現する。